生涯において大切な【子供の負けず嫌い・・・】とは!!
多くのトップアスリートの幼少期の時代には、ある一つの共通点があります。
それは「負けず嫌い」だったということ・・・
国内外のトップアスリートたちが「自分は負けず嫌いだった・・・」と話している場面をよく見かけますし、その選手の周囲の関係者も「誰よりも負けず嫌いだった」と言っています。
では「負けず嫌い」とはいったい何でしょうかね?
試合に負けて悔し泣きをする選手?
できないことをできるまで何度もトライする選手?
単純に人よりも少し我が強い選手?
一般的には、向上心のあるポジティブなものだとする捉え方があります。
そもそも、遺伝のような先天的なもの、環境によって培われる後天的なものを問わず、その人の「性格」といった捉え方をしているケースもあるでしょう。
でも、本当にそうなのでしょうかね・・・?
トップ選手に多く見られるこの「負けず嫌い」を紐解くことで、子どもの将来の可能性が、また一つ大きく広がっていくのではないでしょうか。
今回のテーマ「負けず嫌い」について考えてみたいと思います。
トップ選手に共通する「負けず嫌い」の真の意味とは・・・
そもそも「負けず嫌い」とは何でしょうか?
「『負けず嫌い』とは専門用語では『勝利意欲』と言います。
これは勝ちたいという意欲や気持ちの強さのことですが、
『負けん気』
や
『勝利主義』
と表現されることもあります。
これらは『やる気』や『モチベーション』を表すメンタル面を示す概念の一つです」。
この「負けず嫌い」とは「やる気」という心理面を表す言葉の一つの側面だということ。そうすると、この「やる気」の度合いによって、人は向上心を持って成長したり、試合でパフォーマンスを高めたりできる、ということですね。
例えば「やる気がある」とは、どんな場面でもポジティブに捉えられていますから、一般的にもイメージがしやすいと思います。でもこの「やる気」という概念にこそ、重要なテーマが隠れているようです。
やる気には
『やらされている』やる気と
『自ら進んでやる』やる気
の2種類があります。
前者は、結果や評価を気にしながらやっているために、試合に勝ったとしても
勝てて良かった・・・とホッとすること。
逆に、負けた時は悔しい気持ちよりも『ヤバイ、どうしよう』という感情が生まれてきます。
一方で後者は、勝った時にはすごく嬉しい気持ちになりますし、逆に負けるとすごく悔しい気持ちが湧いてきます。
前者の「やらされているやる気」を「動物園の動物と同じ」と言います。「動物園の環境は、動物からすると至れり尽くせりですよね。餌も出てくるし、掃除もしてもらえるし、外敵に襲われることもないし、種の保存もしてくれます。だからやる気があるのかどうかも分からないような状態です」。
仮にやらされていたとしても、結果が出ている時にはやる気があるようにも見えますが、これは結果や周囲の評価、比較、ランキングなどに起因しているために、"結果でしか"心を満たせなくなってしまいます。
子どもはどうしてスポーツをするのかというと、原点にはエキサイティングしたいという気持ちがあります。その際に避けようとするのが"退屈"です。だから、つまらなくなったらやめるんです。でも前者の場合は、エキサイティングでも満たされなくなる。結果が出ないとモチベーションも上がらないですからね。だからこそ、自分でやる気をコントロールできるようになるのが望ましいんです。
ハンドルを自分で握って、自分でやっている感覚を持つこと。
頑張っているんだという主体的な気持ちになれるかどうかということです。それが『やる気』という大きな気持ちとなって、探究心や向上心へとつながっていきます」
自分が主体となって頑張るということは、まさにトップ選手たちが続けてきたことでもあるはずです。
トップ選手は、負けるのが嫌で頑張ってきました。でも決して、常に勝ち続けてきたわけではありません。それに才能があったということでもないんです。勝敗にかかわらず、どんな時でも諦めずに継続してやってきた。
つまり『やり遂げる力』があったということです。
この「やり遂げる力」こそが、トップ選手に共通する「負けず嫌い」の本当の意味ではないでしょうかね。
自分でやる気をコントロールできるようになるのが望ましい・・・
子どもに限らず、トップレベルの世界でも試合中の選手が感情に左右されて浮き沈みしてしまうシーンを見掛けます。
ピッチでイラ立ちを隠すことができず、それによってさらにミスを重ねていってしまうのです。
『やらされている』やる気とは専門的に言うと「外発的動機付け」、『自ら進んでやる』やる気とは「内発的動機付け」と呼ぶそうです。つまり「やる気」の動機を自分の外側から持ってくるのか内側から持ってくるのか、ということです。結果や評価、比較、ランキングなどはまさに外の情報に左右されているものですし、やる気をコントロールできない原因を"何かのせい"にしてしまっているのです。
「イライラするというのは、コントロールできないものをコントロールしようとしている証拠です。過去を引きずって、そこに戻ろうとしている。でも逆に、内発的動機付けがあって切り替えがうまい選手は、イライラしそうな場面でも、前を向くことができます。『こうなっちゃったか、よし、じゃあ次はこうしよう』と。自分の頭の中で考えて、次の作戦を練って、自己決定するというプロセスを踏んでいるんです」
なので、自分の心の状態を知る作業から始めることで、やる気をコントロールする作業に移れるはずです。
外発的動機付けにも4つの段階があります。
いきなり内発的動機付けに持っていくのは簡単ではないので、少しずつ近付けばいいと思います。
では、それはどのようなものでしょうか。
「段階としては『外的調整』、『取り入れ的調整』、『同一視的調整』、『統合的調整』があります。
最初は『怒られるからやる』から始まり、『期待されているからやらないとな』、『こうやって工夫したらいいかも』、『これをやったら自分の将来に役立つだろうな』と、徐々に『内発的調整』に近付いていきます」
子どもは本来、「勝ちたい」、「うまくなりたい」といった気持ちを持っているものです。だからこそ大切なのは「自分で工夫したプランや、自分の中で模索し、探求した結果として強くなっていくことです」。そうやって自分の中で何かを選び、決定できることが増えれば、"動物園の動物"を抜け出せるのです。
子どもは、やる気を見付けるプロ・・・
積み木で遊んでいて、飽きたらもっと複雑な遊びをするようになりますよね。だから退屈とは、成長の証なんです。少しずつ目標やチャレンジ、ワクワク感を高めていけたらいい。そうすることでエキサイティングを覚えて、より高い目標を見付けて、試合や大会が楽しみになります。そういうベストな心理状態は、指導者や親には作れません。サポートはできても、最終的には自分で工夫するプロセスによって到達できるものですし、その過程は一人ひとり違いますから・・・
こうした話を通して、「負けず嫌い」つまり「やり遂げる力がある」という心の状態とは、自分自身で考えながら工夫して、自分の選択と自分の決定によって生み出していくことがいいのだと理解できます。
ではそうした「心の持ち方」はどのようにして作れるのでしょうか。
また、その時に周囲の大人はどのようなサポートをしてあげられるのでしょうか。
子ども以上に大人に求められる「やり遂げる力」
今まさに勉強を始めようとしていたのに、親から『いつになったらやるの? 早くしなさい!』と言われて、一気にやる気が下がってしまった・・・
保護者の皆さんも、こんなふうに気持ちが沈んでしまった子ども時代の経験はないでしょうか?
人がやる気をなくす瞬間とは、自己決定して行動を起こした直後に、外からの刺激が入ってしまうこと。例えば、親からこうしろ、ああしろと言われてしまうというよう・・・
」
バスケットボールで例えると、ドリブルをしていて「右に仕掛けよう」と動いた瞬間にボールを奪われてしまうとか、絶妙なタイミングでパスを出したら取られてしまった・・・といった状況です。
そんな時に、自分のやる気をコントロールできていないと、その出来事を引きずっていいプレーができなくなってしまいます。
そこで大切になるのは、「自分は今、何をすべきか」を明確にして、行動に移すことです。
やる気は「自己選択と自己決定から生まれる」とお伝えしましたが、これは言い換えると「できそう」とか「やれそう」という気持ちです。
ですから、仮に失敗してしまったとしても、どうしてそうなったのかを見つめて、次はこうしてみようと即座に考えられる「トライ&エラー」を繰り返せることで、切り替え上手になっていきます。
そうした際に周囲の大人は、例えば「ミスしてもオッケー。じゃあそのミスからどんなことが分かった?」というように、子どもの選択や決定をサポートしてあげることがいいとされます。
よく、『褒めるのがいいと言うけど、何を褒めたらいい?』と聞かれることがあります。そこで勝ったこと(=結果)を褒めたら、子どもは次第に『褒められたいからやる』となってしまうかもしれません。だからこそ、結果や評価ではなく、その子がいかに工夫をしたのか、どんな仮説を立ててチャレンジしたのかを褒めてあげるのがいいと思います。そうすることで、本当の意味での勝利や成功、達成感を得られるようになります。
指導の現場では、正解を伝え、そこにチャレンジできているかだけを見る現象が起きている場合もあります。
そうすると子どもは正解を探し始め、いつまでたっても「やらされている」状態から抜け出せなくなってしまいます。だからこそ、今、その子がどう考え、何をしようとしたのかを見極めてあげる必要があります。
今を認め、今できることをやり遂げていく『やり遂げる力』は継続性があるものです。
トップアスリートが持つ「やり遂げる力」は、子ども以上に、関わる大人にも重要なものだということでしょう。
「負けず嫌い」という言葉を、それこそ言葉で捉えてしまうと「負けたくない」、「勝ちたい」という単純な「勝利主義」で終わってしまいます。
それは結果によってブレやすいものです。
でも大事なのはそこを目指すプロセスの中にある『勝ってもっと成長したい』とか、『もっと上のステージでうまくなりたい』というような思いです。それこそが内発的なやる気、つまり負けず嫌いの本当の意味なんです。
では周囲の大人、特に保護者としては、子どものやる気を引き出すために、どんなサポートができるのでしょうか。
その手段の一つは、子どもへの「質問」もしくは「声かけ」にあります。
子どもに「これをやろう」と言うのではなく、「これとこれをやったら、どうなると思う?」という選択式の問い掛けをして、そのすべてを実際に試してみるという方法も効果的です。
子どもにとって、やる気の元であるエキサイティングは、退屈しないことだということですね。
自分の能力よりも低いことを続けたら、それこそ退屈で三日坊主になります。
でも逆に、自分の能力よりはるかに高い目標を設定してしまうと、今度は不安になってしまいます。
だからこそ、退屈も不安もない、ちょうどいい短期目標を作るサポートをすることで、子どもが自己選択、自己決定できるようになっていきます」
自分で気付いて、発見して、行動に移していく。その過程でうまくいかなかったとしても、またそれを分析して、次の行動につなげていく。そういうことの繰り返しが「次はもっとこうしよう」という意欲に結び付いていきます。
この「次への意欲」こそ「負けず嫌い」ということです。
『もう少しだったな』という気持ちを大事にしてあげることがなによりも大切!!
これは決して、バスケットボールに限った話ではありません。
家の中では、社会的スキルを身に付けさせる時間を増やしてほしい・・・
と続けます。
例えば部屋を片付けることや時間を守るといったライフスキルは、バスケットボールでも、それ以外の日常生活、社会人としても大切なことです。
もし、皆さんの子どもが、負けず嫌いではない、負けても悔しがらない、闘争心がない、もしくは、やる気があるのかないのかも分からないと感じているのであれば、子どもの「心」に寄り添ってあげてみてはどうでしょうか。
それはすなわち、子どもの「今」に注目してあげる・・・
ということでもあります。
子どもが自らの頭で「自分は今、何をどのようにすべきなのか」という「今」に集中できるようになるために、親や周囲の大人は、質問や声かけを通したサポートができるはずです。
負けず嫌い」の本当の意味での重要性が見えてきました。このメンタリティーは、バスケットボールはもちろん、子どもが社会に出ていくためにも培っていくべき大事なスキルではないでしょうか。
PBAは大切なお子さんの将来に活きる・活かすべくメンタリティーを始め、心身の成長を育むサポートへ今までも、これからも取り組んで参ります。