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2019年11月15日 [バスケットボール]

指導者・コーチは生涯学習・・・ ここにあり!!

こちらの記事はバスケットボールではないですが、サッカーの名門高校の国見サッカー部の小嶺監督のストレートな回答に、思わず同じ指導者として共鳴いたしました。
■教育論だけで子どもは育たない。大人こそ厳しい経験が必要
子どもたちと接するには歴史を知る必要があると考えています。私が産まれたのは、第二次世界大戦が終わる直前の1945年6月。父親は太平洋戦争で戦死し、母親一人の家庭で私は七人兄弟の末っ子として生を授かりました。母親は教育論を語らない人で、後姿を見ながら育ってきました。
ただ、要所は厳しくて学校から帰ってきて家の手伝いをしていなかったら、私と兄は家に入らせてもらえなかった。牛の餌が置いてある納屋に真冬でも入れられて、一夜を過ごしました。約束を破ったり、人様に迷惑をかけたりしたら怒られるため、母親が怖くて。女手一つで七人もの子どもを育てていたので、父親の代わりをしなければいけなかったんでしょう。
幼少期は終戦直後で日本がどん底だった時代。私のような家庭は珍しくなかった。小さい頃にお米を食べたのは正月やお盆、祭り、慶弔関係くらいで、学校に行く時も弁当を持っていけませんでした。サラリーマンの家庭は弁当を持ってくるんですけど、私はお米じゃないから恥ずかしくて。長男が着ていた学生服を五男の私が着たり、物が豊かじゃない時代で、今の子どもたちとは雲泥の差があります。
今の親御さんたちも高度成長期に育ってきたため、日本が苦労していた時代を知りません。教育論は語れるけど、自分が厳しい経験をしてきていないから、そこに厳しさが伴っていない。経験が無いから言葉に重みがないように感じます。
今の若いコーチたちは立派な言葉を子どもたちに伝えます。情報化の時代なので私らの数倍以上の情報を持っていますが、中身が伴っていなければ意味がありません。自分が経験していない表面だけの空想論や教科書論では子どもは育たないのです。情報に身を持って経験した厳しさが合わさることで、飴と鞭を正しい割合で使い分けができるようになるのです。


小学生のバスケットボールの指導、中学校の部活指導も同様ですね!!
本当に経験値の少ないコーチや教員が、机上の空論で実際に指導してもリアリティに欠け、子供の中にはストンと腹落ちしたような指導ではなく、上辺だけの指導となっている光景を目にし、またたくさんの父兄・子供たちからも耳にしますね・・・



■時代に合った指導法と状況に合った距離感が重要
今の親御さんでも学生時代に真剣にスポーツに打ち込んできた人ならまた違うかもしれません。強くなりたい、上手くなりたいと本気で頑張っていた人なら、「これくらい厳しく接しても大丈夫」という見極めができるからです。
30年ほど前にはこういうこともありました。
私が国見高校で日本一になった頃、飲み屋に行くと、女将さんが「監督は凄く厳しいらしいですね」と言ってきたんです。「俺は国見高校のサッカー部で小嶺先生から厳しく鍛えられた」とお客さんが自慢していたそうです。その人の名前を聞いても覚えがなく、教え子たちに聞いても分からない。教え子の一人が思い出して、3日間ほどサッカー部にいて辞めた選手だと分かりました。
そうした人が社会に出てリーダーになった時に、本当に人を引っ張れるのでしょうか。本当の厳しさを知らないのに知ったフリをしている。私には嘘つきが嘘の指導をしているようにしか思えません。
ただし、厳しいだけでなく時代に応じた指導法は考えなければいけません。「小嶺サッカーは走らせるサッカーだ」なんて言う人もいますが、それははるか昔の話であって、物は無いけどハングリーさがあった時代を過ごした子どもやそうした時代を過ごした親御さんの子どもにマッチしていて、ちょうど良かったんです。
ところが、今は親御さんも子どもも厳しさを経験していない。そうした世代に厳しい指導をしても問題が起こるだけです。今は車社会だけど、当時は車社会じゃなかったから歩く機会が多く足腰や身体が強かった。今も同じ走り方をしたら、子どもたちは死んでしまいます。
 
■子どもたちとは適切な距離感を見極めるべき
今の子どもたちは私が汚い言葉をかけると、「先生、新聞社の人が来ていますよ」なんて冗談で返してきます(笑)。選手が気さくに話しかけやすい雰囲気を作るようにしていますが、適度な距離は意識しなければいけません。
セレッソ大阪でプレーしている安藤瑞季には「俺はいつお前と親子になった? 兄弟でもないぞ。距離は保ちなさい」と言ったこともあります。子どもとの距離感は指導者が気を付けなければならない点で、「俺はこうだ!」と高圧的な態度をとっていると子どもが寄ってきません。かと言って、「名医は自分の子どもを手術できない」という言葉があるように距離が近すぎてもいけない。
ある時には突き放し、ある時には仲間になる。時にはファミリーになったり、指導者が選手になったかのような指導も必要で、指導者は状況に応じた使い分けができなければいけません。
試合に出られていない子どもが、自分をアピールするため私にすり寄ってくることもありますが、そんな時はまともに話を聞いてはいけない。私が愛想なく接すると今度はコーチの方に行くのですが、私は「まともに聞いていれば、要領が良い子どもばかりになる」と釘を刺します。
試合に出られていないから気に入られたくて近づいてきているのを理解した上で接するべきなのです。そうした子が発する泣き言やチームメイトの悪口に肩入れすると、指導者としての本質を見透かされてしまいます。
ただし、本当に可哀そうな子かどうかは見極めなければいけません。厳しい家庭環境を育った子たちもたくさんいます。私が彼らと同じ家庭環境なら道を逸れていただろうと思うケースも少なくありません。今は一人ひとり家庭環境を知らない先生も多いのですが、状況を把握し、先生や指導者で共有できていればそうした子どもに合った指導ができます。今の指導者や先生は学校内での教育で終わっており、子どもたちの本質が見えていないような気がします。
 
■人間の表と裏の心を読むのが教育の原点
今の時代の教育論、家庭論を話しても子どもの心に響かない。厳しい時代を経験したり、勉強した人が先生や指導者にならないと本当の教育はできません。綺麗ごとだけでは教育できないのです。
私が先生になりたての頃は、テスト期間になると一人ひとりの家を訪問して、勉強しているかを確認していました。当時、漁師の家で育ったよく勉強ができる子がいました。テストの成績がいつも良いので「よく勉強しているな」と声を掛けると、「先生! 家の手伝いをしているので、まったく勉強していません」と返すのですが、いつも学校で一番の成績を残していました。
ですが、家に行くと毎朝3時頃まで勉強をしているのが分かりました。そうした子がいたから、今の生徒にも「勉強したか?」なんて聞くんです。「勉強しました!」と即答する子には、「それは嘘だな。本当に勉強をしている生徒は『勉強しました!』なんて言わないぞ」と返すんです。勉強したかどうかは全て結果として表れます。本人は勉強したつもりでも赤点がたくさんあれば、意味がない。見栄を張ったり、表面だけ繕っているのか人間の心を読むのが教育の原点。生徒の裏も表も知るためには、指導者も勉強しなければいけません。
僕が先生になってすぐの頃、大渕校長という哲学者のような人がいました。週に1度、800人ほどいる生徒の前で全校集会をするのですが、話が長いから寝ている生徒ばかり。若かった私は酒の勢いを借りて「校長先生の話は生徒に分からないと思います」と面と向かって発言したんです。すると、「俺は教員に話をしているんだ」と言われ、中国の一目の羅という言葉を教えて貰いました。
鳥を捕まえようと網を張っても、一つの網の目にしか鳥は捕まらない。魚を捕まえる際も同じです。だからと言って、編み目が一つの網を用意しても鳥は捕まえられません。指導者もたくさんの知識を持っていても、生徒にはそれぞれの個性があるから、合うのは一つしかない。どれがその子に合うか分からないから、たくさん勉強をして、編み目を増やさないとダメなんだと。
サッカーの指導者もサッカーを知るだけではなく、授業をするための知識、社会経験などたくさんの知識を得るべきだと教わりました。一目の羅という言葉は今でも大事にしている言葉です。
講演会などで「選手を育てるために何が大事ですか?」と聞かれることが多いのですが、「そんな物はない」といつも答えています。なぜなら毎年、子どもが入れ替わるからで、その時仕入れた知識だけでは対応できないからです。
それまでにずっと勉強を続け、何千、何万もの知識の中から、その子に合うであろう知識を当て嵌める。古い知識だけではなく、新しい時代に合った知識も必要になるでしょう。過去の知識なら私が上ですが、それだけに留まらず今の情報も仕入れなければいけない。生涯勉強という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。



生涯勉強、まさにその通りですね・・・
コーチ・指導者が毎日、切磋琢磨し、毎日心境が変わる多感な子供たちと正面から向き合い、その場・その時の顔色や状況であの手この手で試行錯誤しながら取り組むこと、ここに指導者・コーチの奥深さがありますよね・・・

当クラブも子供たちとしっかりと向き合い、指導者・コーチが慢心することなく、日々勉強にて取り組んで参りたいと思います。


サカイク 2019年11月5日記事より抜粋
取材・文・:森田将義

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